コートニーバーネット(Courtney Barnett)というミュージシャンを聞いたことがありますか?
オーストラリアのシンガーソングライターなのですが、日本では知名度はそれほど高くないアーティストです。
さて、今回は知らない方に向けて「コートニーバーネット入門」と題し、彼女の魅力、そしておすすめ曲を紹介します。
11月12日にニューアルバム “Things take time, take time” が発売することもあり、今回の記事を書きました。
コートニーバーネットとは?
コートニーバーネット(Courtney Barnett)はオーストラリア・メルボルン出身のシンガーソングライターです。
2016年にはグラミー賞の最優秀新人賞にノミネートされ注目を集めていました。
日本にも数回来日しており、ライブハウスでのライブの他、フジロックにも出演しています。
コートニーバーネット3つの魅力
それでは、私が思うコートニーバーネットの魅力をお伝えします。
① レフティーで自然体で歌う姿
自分を作って表現しているミュージシャンは多いですが、コートニーは普段生活をしているありのままの姿をさらけ出すように歌います。この姿がとにかくかっこいい。
気怠く歌う姿も彼女の特徴で、レフティー(左利きギター)とその面持ちからニルヴァーナのカート・コバーンのようだ、と評されることも多いです。実際私も初めて聞いた時に女性版のニルヴァーナのようだと思いました。
レフティーなだけでなく、ピックを使わずにギターストロークする姿も特徴的です。
② 詩を語り掛けるように歌うスタイル
力を入れて歌う、というよりは、語り掛けるように歌うスタイル。ポエトリーリーディングをしているような、音楽に詩をのせて語り掛けるような歌い方です。
曲によってはラップではないものの、言葉が矢継ぎ早にあふれ出てくるように歌います。作詞に時間を割いているかと思えば、浮かぶときはすぐに浮かぶタイプだそう。Pedestrian at bestという曲は1晩で書き上げたとのこと。
‘Pedestrian at Best’ I kind of came up with at the last minute,”…“I showed the riff to the band and we kind of jammed on it; but I couldn’t think of a melody, or a chorus, or any lyrics at all,” … “When we recorded it I just set down a structure, and wrote the lyrics later that night, to the music.
「Pedestrian at Best」は、ギリギリになって思いついた曲。[…]リフをバンドに披露してから合わせたんだけど、メロディもコーラスも歌詞も全然思い浮かばなかったんだ。 […] 録音した時は、構成だけ決めて、その夜に音楽に合わせて歌詞を書いたの。
https://diymag.com/2015/01/29/courtney-barnett-i-came-up-with-pedestrian-at-best-at-the-last-minute
次々に言葉が出てくるような歌い方はボブ・ディラン(Bob Dylan)のようだといわれることもしばしば。
③ 歌詞がとにかく魅力的
コートニーの歌詞は詩だと思っています。2016年にボブディランがノーベル文学賞に選ばれたのも、歌詞が詩として評価されたことがありますが、コートニーの曲も同様に詩を聞いている感覚になります。
彼女のインタビューを見ていると話下手な感じで奥手な様子が見て取れます。地に足のついた言葉選びが多く、背伸びをしていない日常に溶け込むような歌詞。
Come on Davey, let’s go plant a tree.
You bring the spade, I’ll bring the seeds. – David
デイビー、木を植えに行こう
君がスコップを持ってきて、わたしが種をもっていくわ
He said “I could eat a bowl of alphabet soup and spit out better words than you” but you didn’t ーName less, face less
彼は言ったの「アルファベットのスープを飲んで、君よりいい言葉を吐き出してやる」って。でも結局しなかったのよね。
無理している歌詞はどこか押しつけがましさがありますが、コートニーが書く曲は押しつけがましさが一切感じられず、情景が浮かびます。どこにでも溢れている日常を彼女の視点で切り取って芸術になっている、そんな感覚。皮肉やユーモアもたまりません。
I got drunk and fell asleep atop the sheets but luckily I left the heater on. And in my dreams I wrote the best song that I’ve ever written… can’t remember how it goes – History Eraser
酔っぱらってシーツの上で寝ちゃったけど、ラッキーなことにヒーターはつけっぱなしだったよ。それで夢の中ではいままでで書いた曲の中で一番いい曲が書けたの。どんな曲だったか思い出せやしない。
ぜひ抜粋ではなく、1曲の歌詞を流れで見てみてください。
歌詞は公式ホームページにて公開されています。英語の勉強にもおすすめですよ。
https://courtneybarnett.com.au/lyrics
コートニーバーネット:おすすめ曲5選
それではわたしが思う、コートニーバーネットのおすすめ5曲を紹介します。
1. Avant Gardener
曲名の Avant Gardenerはavant-garde(アバンギャルド、前衛的な、型にはまらない)とgardener(ガーデナー、ガーデニングする人)を合わせた造語。
歌詞を簡単に要約すると、暑い日にガーデニングをしていたら、呼吸が苦しくなって倒れてしまうという曲です。主人公は救急車で運ばれて息苦しい中いろいろな考えが頭をよぎります。
下記のようなオーストラリア要素も多め。
・Triple-O →(3つのO)はオーストラリアの緊急電話は000(ゼロ3つ)
・Weet-bix → ウィートビックス オーストラリアのシリアル
2. Elevator Operator
20歳のOliver Paulという男性と、いかにもお金を持っている見た目をした女性がエレベーターに乗り合わせる、という歌詞。
お互いの視点や印象、思い込みが錯綜して、女性は男性がエレベーターで最上階から自殺をすると思っています。解釈によっては男性は自殺願望はあるか、ないか分かれるところ。
ストーリー性の強い曲で、サウンドもクール。
3. Depreston
曲名のDeprestonはDepression(鬱)とPreston(地名:プレストン)を掛け合わせた造語。
プレストンに家を見に来るも、近所では警察が窃盗の人を逮捕していたり、家には前の住んでいた人の生活が見えてどうしましょう、こんな曲でしょうか。状況の描写が多いものの、そこから心理状況が見えてくるのが詩的で面白い部分。
コードはFとCの2コードのみで構成されていますが、2コードのみとは思えない綺麗なメロディーです。
4. Anonymous Club
歌詞が好きな1曲。曲の雰囲気も大好きです。
Leave your shoes at the door, along with your troubles.
Let’s start an anonymous club, I’ll make us name badges with question marks. – Anonymous Club
靴はきみの抱えているトラブルと一緒に、ドアで脱いでね
じゃあ匿名クラブを始めようか。ハテナマークの付いた名札をつくるね
5. Continental Breakfast
アメリカ出身のカート・ヴァイル(Kurt Vile)との合作。
コンチネンタルブレックファーストは火を通さない食べ物(パン、フルーツ、サラダ、シリアル等)がメインのヨーロッパの食事の事。continentalは大陸の意味。
歌詞の中ではintercontinental friendships (大陸間の友情)という言葉も登場し、アメリカ出身のカートと、オーストラリア出身のコートニーがコラボしたことでの交友関係も示唆しています。
ビデオの中でコートニーバーネットがキスをしている女性はパートナーのジェン・クロアー(Jen Cloher)。彼女も同じくミュージシャンです。
ニューアルバム: Things take time, take time より
さて、最後に11月12日発売のニューアルバム “Things take time, take time”より、すでに公開されているミュージックビデオをご紹介します。ぜひ聞いてみてください。
Write A List Of Things To Look Forward To
Before You Gotta Go
Rae Street
If I Don’t Hear From You Tonight
さいごに
いかがでしょうか。お気に入りの曲は見つかりましたか?
好みが分かれるアーティストではありますが、好きな人は好き!そんなアーティストかと思います。
わたしは大学時代に後輩から勧められてドはまりし、以来CD発売が近づくといつもワクワクします。
ぜひ聞いてみてください。