こんにちは! ココイングリッシュ英語講師のだいちです。GWも終わり穏やかな季節になってきましたね。
さて、今回はディスレクシアに関して考えていきたいと思います。
今まで様々な英語のお悩みをもった受講生を指導してきました。その中でディスレクシアの症状をお持ちの方々に指導していたことがあります。
はじめて指導した時には知識のないまま出来る限りのことを試していたのですが(今も知識は乏しいので理解を深めたいと考えていますが)、今回は今までのレッスンの中でも有用だった学習法・指導法について記載していきたいと思います。
インターネット上ではディスレクシアの方への英語学習への言及はまだまだ少なく、少しでも参考になれば幸いです。
ディスレクシアとは?
ディスレクシア(英語: dyslexia、ディスレキシアとも)は、知的能力および一般的な理解能力などに特に異常がないにもかかわらず、文字の読み書きに著しい困難を抱える障害であり、学習障害の要因となることがある
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%82%A2
ディスレクシアは文字の読み書きが困難な学習障害(LD: Learning Disability)の症状を言います。
文字が動いて見えたり、文字の順番が変わったり、鏡のように反転して見えたり等、人によって症状は様々。
そのため能力がある方であっても、読み書きができないことから仕事に支障をきたすことも多いそう。日本では認知度がまだまだ高くなく、学校・職場等において中々理解が得られないこともあるそうです。
実際に英語を話す力がある人でも、職場の理解がなくTOEIC(リスニング&リーディング)の点数を求められ、昇進が難しくなったという方もいらっしゃいました。これは非常に厳しい。
こちらの動画にてディスレクシアが分かりやすく説明されています。ぜひご覧ください。
レッスンにおいて効果があった方法
さて、指導する点において効果があった(教える中で手ごたえがあった)方法をご紹介します。基本的に読む・書く行為がディスレクシアの方には負担になるため、レッスンは文字を出来る限り避ける方向で進めていました。
① 画像の多用
基本は文字情報を使わずにイメージで覚えて頂くことが大切だと考えます。
対面で画像を印刷・タブレット等で見せることはもちろん、Zoom, Google Meet, Skype等を使用したオンライン授業でも画面共有ができるため、画像は簡単に見せることが出来ます。
画像を使ったレッスンアイディア
・画像で状況説明を英語でしてもらおう
・複数の画像を見せ、ストーリをつくってもらおう
・英語の説明にあう画像はどれかクイズ(TOEICパート1のように)
・英単語は音と画像で覚えよう
・Google検索の画像で単語イメージを強化
② ジェスチャーの多用
2つ目はジェスチャーの多用です。こちらもイメージをつけるために有効な方法でした。
例えば他動詞の時には人・物に影響があるような動作を付けることでイメージを、自動詞の時にもそれに沿ったジェスチャーをつけます。
名詞であってもappleであればリンゴの、buildingであれば建物の簡単なジェスチャーをすることで、定着を促すことができます。
教える側、受講生側ともに身体を使いましょう。
③ 動画・音声で音に慣れる
3つ目は動画・音声で音に慣れることです。
ディスレクシアの症状がある場合、文字情報と結びつかない分、音がそのまま意味に繋がるためこれは大きなメリットだと捉えています(通常、日本語英語が強い方は文字情報との結びつきが強い傾向にあるため)。
そのため、出来る限り多くのネイティブ音声を真似て頂くことで、フレーズや文法・発音の定着を図ります。
リンキングやリダクションといった音声変化に関しても、音がどう変化するか説明を入れつつ、ネイティブ音声を真似ることで効果が表れます。
動画・音声を使っての練習
・コピーイング(1フレーズ再生して、その後真似る)
・シャドーイング(聞いた音声を影のようについて真似をする)
・オーバーラッピング(音声と同時に発音。数度練習し覚えたあと、同じタイミングで発音してもらう)
④ 声に出しての反復練習
4つ目は声に出しての反復練習です。英語に限らず何ごとも繰り返さないと定着しません。
文法やフレーズのイメージを①~③で付けたら、何度も声に出して自分の言葉になるまで反復練習を行います。
安定してきたら、同じ構成の文章を使って、違うフレーズを作ってもらったり、ロールプレイをすることで定着していきます。
先述のジェスチャーと合わせ身体を動かしながら声を出していきましょう。
生徒が読み書きの力を付けたい場合にどうするか
受講生によっては「仕事でどうしても英語を読まなければならない」、「英文メールを返信する必要性がある」等で読み書きが必要となり、困難であってもreadingやwritingスキルを上達したいという方がいらっしゃいます。
その際には負担にならない程度(レッスン時間のうちの10~20%程度のみ)に文字を使いレッスンをすることもありました。
少しでも負担を減らし、学習効果を出せるよう工夫していた点として3つお伝えします。
① 拡大コピーをする/拡大表示する
リーディングでは文字数を少なく区切り、できる限り拡大コピーをしリーディング練習をします。
オンラインレッスンの場合には共有画面いっぱいに拡大表示をしていました。
補助として定規や紙、本等を文章の下に置くことで文字が見えやすくなることがあるようです。
② フレーズ毎に分けて練習
パッセージ毎に読まずに、フレーズに分けて練習していました。
例えば、ビジネス用のメール文を読む練習であってもいきなり全ての英文(パッセージ)を見せず、出来る限り短いフレーズに区切ります。
文章が長い場合にはチャンク(英語の意味のかたまり)に分けることで、負担を減らすことが出来ます。
文字を扱う場合には時間を5分、10分、15分と短い時間のみと決め、文字を長時間扱わないことで負担を減らすことが必要だと考えます。
③ ライティングは口頭で文章を作ってから
ライティング練習をする場合にはまず口頭で文章作成してもらい、それからライティングに移りましょう。
いきなり書き始めるより負担を減らすことができます。
紙に書く場合には少々大きめに書いていただき、タイプをする場合には予測変換のサポート機能に頼ることもアリでしょう。
p,b,d等は似ている文字で区別がつきづらく、また反転しやすいアルファベットですので、教える側は受講生の意図を汲み取ることも大切です。
自宅学習・宿題はなにをする?
英語を学ぶ上でレッスンだけで英語力向上は難しいもの。日々の学習があってはじめて語学力はついてきます。
自宅学習でできるアイディアを見ていきましょう。
① コピーイング
コピーイングはワンフレーズ毎に音を止めて、そのフレーズを真似して発音します。
英語のリズムやイントネーションも意識的に真似ることがポイント。
音源はレッスンで使った音源だけでなく、ドラマやYoutube等から選ぶと良いでしょう。
② シャドーイング
シャドーイングは聞いた音を影のようについて発音するという学習方法です。
コピーイングはワンフレーズ毎に音を止めて真似るのに対し、シャドーイングでは止めずに聞こえた音をすぐに真似ていきます。
音声知覚を鍛えることが出来ます。
③ フラッシュカード(絵・画像のみ)
絵や画像を見て当てはまる単語の発音を行う、という練習方法。
画像検索の画像をプリントアウトしたり、フラッシュカードのセットを買って準備しましょう。
絵と発音がでるフラッシュカードもあるようです。
④ スマートフォンやタブレットの活用
最近はアプリやYoutube等ですぐにネイティブの音声にアクセスできます。
分からない単語も音声検索で「〇〇(知りたい単語)+発音/英語」と検索することで発音も確認できるので活用していきましょう。
教える側の心構え
英語指導をする側としては、どういった症状なのか最低限の知識を持ってレッスンすることが大切だといつも感じます。
ディスレクシアについてのサイト(https://www.npo-edge.jp/educate/)やディスレクシアに関する本を読んで症状の理解を深めることが英語指導を円滑にする第一歩かもしれません。
私自身知識が浅いですが、何が有用か、出来ることを行いつつ指導していきたいです。
余談 – 映画 In her shoesについて
最後にちょっとした余談です。
In her shoes(イン・ハー・シューズ)という映画があります。キャメロン・ディアス演じる主人公は自由奔放な性格なもののディスレクシアの症状を持っており、それにコンプレックスを抱えていました。そんな主人公が成長していくストーリー。
映画でディスレクシアの症状が取り上げられることは珍しいかもしれませんね。
映像はそんな彼女が寝たきりのお爺さんに促され詩を読むシーン。お爺さんや詩との出会いから人生が少しずつ変わっていきます。
私も大好きな詩。良ければチェックしてみてください。
エリザベス・ビショップ “One Art”
おわりに
学校教育では会話がメインの授業が増えてきたものの、ディスレクシアの方にとっては文字情報がまだまだ必須なのが辛いところでしょう。
言葉は誰もがコミュニケーションツールとして持てるものですので、英語もその一つとして”楽しく”学ぶ方が増えればと思っています。
ディスレクシアに関して受け持った受講生は多くはないため、「他にもこんな方法が有用だった」等ありましたらお気軽にお問合せ頂ければ嬉しいです。