こんにちは。今回のテーマは「詩を読む人に読んでほしい詩」です。
大学でアメリカの詩を学んでいたこともあり、時間があると詩を書いたり読んだりしているのですが、
今でも大切にしている観点が入った”Introduction to Poery”という詩をご紹介します。
ビリーコリンズという詩人が書いた詩で、名前の通り「導入(introduction)」には良い詩ですよ。わたしなりの訳も載せましたのでご覧ください。
詩への導入の詩
それでは早速見ていきましょう。原文、そのあとに訳を載せています。
Introduction to Poetry
By BILLY COLLINS
I ask them to take a poem
and hold it up to the light
like a color slide
or press an ear against its hive.
I say drop a mouse into a poem
and watch him probe his way out,
or walk inside the poem’s room
and feel the walls for a light switch.
I want them to waterski
across the surface of a poem
waving at the author’s name on the shore.
But all they want to do
is tie the poem to a chair with rope
and torture a confession out of it.
They begin beating it with a hose
to find out what it really means.
Billy Collins, “Introduction to Poetry” from The Apple that Astonished Paris. Copyright 1988, 1996 by Billy Collins. Reprinted with the permission of the University of Arkansas Press.Source: The Apple that Astonished Paris (University of Arkansas Press, 1996)
https://www.poetryfoundation.org/poems/46712/introduction-to-poetry
詩へのご招待
by ビリーコリンズ
一編の詩を手にとって
光にかざしてごらん
カラースライドみたいに
詩の巣箱を耳に押し当てても良い。
詩にネズミを一匹落として
そいつが出口を探すのを観察しても良いし、
詩の部屋を歩いてみて
壁に手を当て電気のスイッチを探しても良い。
詩の表面を水上スキーしながら、
浜辺にある著者の名前に
手を振ってみてごらん。
そうは言っても、君らがすることは
詩をロープで椅子に括りつけ
白状させようと拷問すること。
本当の意味は何かと
ホースで詩を叩き問い始めるのだ。
(きくざわだいち 訳)
詩をホースで叩いてませんか?
いかがだったでしょうか。
視覚、聴覚、触覚等の五感に頼ることの大切さと、
残念ながら読み手が行ってしまうこと(拷問とまで言っている)の皮肉とユーモアが効いている詩です。
本当の意味はなんだ!吐け!
こんなことを思いながら、読み手は「どんな意味?どういうこと?」と問いただしがちです(私もやりがち)。
詩は不明瞭な部分があるものも多く、読者の想像力だけ解釈があります。文学として研究もされますが、研究者によっても解釈は違うことが多いです。
ただビリーコリンズとしては「読み解く」ことではなく身体や心で「感じる」ものとして詩を受け取って欲しいのでしょう。
Don’t think, feel. ではないですが、私たちは感じたままに受け取ることは忘れがちですね。感性大切。そんな詩でした。
こうやって私がすこしでも解説を入れると、それもホースで叩いていることになるのが、良い皮肉になって好きだなぁと思います笑
ビリーコリンズのTEDトーク
ビリーコリンズさんは今まででTEDトークに2回登壇しているので、「どんな方か気になる!」という人はぜひご覧ください。
載せたのは飼い犬が考えているであろうことを詩にしたトークでユーモアが効いています。
サクッと4分で見れますよ。
おわりに
ビリーコリンズから少し離れますが、むかし、谷川俊太郎さんの講演会に行った時の話です。
谷川俊太郎さんの詩で「なんでもおまんこ」というかなーり攻めた詩があるのですが、
インタビュアーだった山田馨さんが「どうしてそういう詩が出来たの?」と聞いたところ
「出来ちゃったんだからしょうがない、わかんないよ笑」と答えていたのが印象的でした。
詩人自体も「自分でも意味わからん」ということが多かったりするのですね。
書き手が分からない部分が読み手によってさらに色々解釈されることも、詩の面白いところだなといつも思います。
読み手の数だけ解釈あり。
音楽でも小説でも芸術はみなそうですが、詩も同じ。
ぜひ、ビリーコリンズの”Introduction to Poetry”で詩の読み方を体感してみてください。では。