こんにちは。英語講師のだいちです。
アメリカの大御所バンドWilco(ウィルコ)を知っていますか?
歌詞、音楽性ともに好みのバンドで長いこと聞いているバンドのひとつです。
そんなウィルコのアルバムの中でも最も人気が高い「Yankee Hotel Foxtrot(ヤンキー・ホテル・フォックストロット)」というアルバムがあります。
英語を勉強している人でもこのタイトルの意味は分からないのではないでしょうか?
今回は順を追ってヤンキーホテルフォックストロットの意味を見ていきます。
ヤンキーホテルフォックストロットについて
ウィルコのアルバムの中でも完成度は一番といってよいほどの名盤。曲調や楽器の使い方、社会風刺も含め、ほんっとに大好きなアルバムで何度もリピートして聞いていました。アマゾンでもレビューの高さが伺えます。
2001年9月に発売したこのアルバムは今年20周年。
収録曲のひとつ、Jesus,etc.は2001年の9.11を彷彿させる曲として毎年9月になるとよく取り上げられています。
2022年4月現在ウィルコは20周年を記念してヤンキーホテルフォックストロットツアー中。2022年9月には20周年を記念しリマスター盤が発売されるそうです。楽しみ。
ヤンキーホテルフォックストロットの意味とは?
アルバムタイトルの意味は単純な説明が難しく、順を追って意味を確認していきましょう。
そのまま意味を取ると理解不能…?
まずはひとつひとつの単語の意味を確認してみましょう。
Yankee Hotel Foxtrot
・Yankee – ヤンキー、米国人
・Hotel – ホテル、宿
・Foxtrot – フォックストロット(馬が速足から歩きに変わる時の小走りのこと)
これだけだと「え、どういうこと?」と意味が取れませんよね。
解読の手がかりとしてNATO(北大西洋条約機構)が定めているコードが関係してきます。
NATOフォネティックコードとは
NATOフォネティックコードとは、欧文通話表の中でも北大西洋条約機構が定めた通話表である。無線通話などにおいて重要な文字・数字の組み合わせを正確に伝達するため、NATOによってラテン文字の通話規則を定めた。
Wikipediaより https://ja.wikipedia.org/wiki/NATO%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%8D%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89
コートでの情報伝達の際に「フォネティックコード」というものを使いアルファベットを正確伝えることがあるそうです。
このコードをアルバムタイトルに当てはめて考えてみましょう。
画像を見てみるとヤンキー、ホテル、フォックストロットのそれぞれ頭文字を取りアルファベットのY、H、Fを表していることが分かります。
コードのYHF、これがヤンキーホテルフォックストロットが指すものです。
フォネティックコードについて(NATOの記事・英語):https://www.nato.int/cps/en/natohq/news_150391.htm
YHFが意味するものとは
このコード、YHFが指すものは何でしょうか。ウィルコに関する記事からの引用を見てみましょう。
In fact, “YHF” is the callsign of one of the high-traffic stations used by Israel’s Mossad intelligence agency, ….
実際、”YHF “はイスラエルの諜報機関”モサド”が使用する混線時の呼び出し信号である,(略)…。
https://www.pastemagazine.com/music/wilco/wilco-yankee-hotel-foxtrot/
YHFが表しているのは、イスラエルの諜報機関のモサドが使用していた信号とのこと。
この信号として使われていたとされる声をウィルコは曲中にサンプリングし使用しています。
The Conet Projectについて
アルバムの10曲目「Poor Places」の最後にタイトルの「Yankee Hotel Foxtrot」という声がサンプリングされています。
実はこの声はThe Conet Project(ザ・コネット・プロジェクト)という乱数放送を収録したCDからサンプリングされたもの。
ザ・コネット・プロジェクト:短波乱数放送の録音は、1997年にイギリスのIrdial-Discsレコードよりリリースされた、乱数放送を収録した4枚組のCDである。
– Wikipediaより https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B6%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%83%88
因みにサンプリングは無許可で使用したため、その後著作権侵害で訴えられています。和解済み。
乱数放送は心をくすぐる謎めいた何かを感じます…!
乱数放送特有のノイズがアルバムの雰囲気とマッチし、当時のアメリカを彷彿とさせる世界観を作っています。
乱数放送ってなに?
乱数放送とは、諜報活動に類するとみられる、もっぱら非公式なラジオ放送で、数字などを用いた暗号を、人の声、あるいはそれを代替した機械でアナウンスすることによって、特定の相手に対してのみ情報を伝達しようとする様態が認められる番組または放送局の呼称である。
– Wikipediaより https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%B1%E6%95%B0%E6%94%BE%E9%80%81
まとめ
・タイトルはThe Conet Projectの乱数音声から取った。
・Yankee Hotel Foxtrot (ヤンキーホテルフォックストロット)はYHFのコードを伝えるためのNATOフォネティックコードを使った信号。
・YHFの意味はイスラエルの諜報機関”モサド”が使用する混線時の呼び出し信号。
おわりに
参考になったでしょうか。海外の曲やアルバムも意味が分かることでまた見方や聞こえ方が変わるなと感じます。
因みにこのアルバムの中で一番好きな曲はI am trying to break your heartです。
ウィルコは2022年5月27日には新しいアルバム「Cruel Country」を発売予定ですので、そちらもチェックしてみてください!